タグボート用防舷材開発PROJECT

巨大な船を押すタグボート。キャプション「タグボートを進化させよ。」 入稿する輸送船。キャプション「経済の発展とともに、海上輸送はより大規模になり、船は次第に大型化した。」

大型化するほど、操船は難しくなる。
巨大な輸送船の離岸や接岸を支援する船、それがタグボートである。

巨大船が接岸する際、その船体を直接押して接岸を支援するタグボートは、船体を守るための緩衝材として、1960年代は木材やロープを使用していた。これらは耐久性が低く、頻繁に交換が必要になっていた。

港での実績はある。しかし、船での実績はゼロ。

港の岸壁に取り付けられた防舷材。キャプション「港で、シバタ工業の防舷材を知らない人はいない。」

緩衝材の取り替えに悩む船会社の声を耳にしたある造船所が、港で岸壁と船体を保護する「防舷材」の分野で大きな実績を持つシバタ工業へ、耐久性のあるタグボート用防舷材の開発を相談してきた。

しかし、巨大な船を動かすタグボートもまた大きく、その船体に取り付ける防舷材をどうやって作るかは一から考える必要があった。

完成まで、3年。

造船所や船会社にヒアリングを重ね、時には聞いたこともない専門用語が飛び交う中、少しずつ、タグボートの推進力に耐える強度や、適切なサイズなどを導き出していった。

工場内に並べられた、円筒形のタグボート用防舷材。

厚肉で強度があり、耐候性も兼ね備えた素材を、しなやかに曲がる円筒形にし、船体のカーブに合わせて曲げる加工技術を確立。

実際に試作品がタグボートにフィットするかどうか、実サイズでの検証なども繰り返し、
開発スタートから3年、ついにタグボート用の防舷材が完成した。

「なんだ、あのタグボートは?」

黒い円筒形のゴム製の防舷材が取り付けられたタグボート。

船体の周りに、木材や麻のロープを取り付けるのが一般的だった時代に、黒光りする円筒型の防舷材を身にまとったタグボートは、ある意味、未来的ですらあった。

1960年代にプロジェクトがスタートしてから、現在までつくったタグボート用防舷材は数百隻分以上にのぼる。日本全国、ほぼ全ての港で利用され、国内シェアはダントツトップだ。

タグボート用防舷材の表面に刻印されたSHIBATA JAPANの文字。

もちろん国内にとどまらず、シンガポール、オーストラリア、ニュージーランド、アメリカ、香港、中東各国等、世界中の港で利用されている。

現在では、シバタのタグボート用防舷材は、世界のどのタグボート用防舷材メーカーの追随も許さないほど、大きなシェアを獲得した。